カテゴリ: 旅館

心に残るお客様② 蕎麦と奥様をこよなく愛するお医者さま

 自然の中で暮らしていますと一般的に害虫と呼ばれる虫もたくさんいますが、可愛らしい草花に囲まれるというこの上ない幸せも味わえます。色鮮やかなものを見ると人工的な印象を持ってしまいがちですが、自然の中の植物は何とも言えず華やかな色彩をまとっています。
今の咲いているあざみもその一つ。この花を見るとどうしても思い出すお客様がいらっしゃいます。
 無類の蕎麦好きのお医者さま。
当時、夕食の献立のひとつだった自家製手打ちそばを気に入られてご利用いただくようになりました。2年間に8回もお越し下さいました。何よりも印象的なのは、とても穏やかで優しい笑顔です。そして、いつも側で向日葵のような明るい笑顔を絶やさない奥様。花粉症を患うわたくしが年中くしゃみをしていると「よか薬ば、やろうか」とお薬をいただいたこともございます。チェックアウト後お車でお帰りの際、客室係が歩いて帰っていると「乗っていかんね!」とお声をかけてくださったこともあるそうです。
 とても明るく仲の良いご様子からは想像もできませんでしたが、ご主人様は大きな病と闘っておられました。
 最後にお越しいただいた時に、ご自身で描かれた2点の絵をご持参されました。ひとつは客室から見える阿蘇の山々、もう一つは、鮮やかなあざみの花。
わたくしは、そのあざみがとても明るく美しかったので「この絵は、奥様をイメージして書かれたのではないですか?」とお尋ねすると、「んー、うちんとが(あざみを)好きだけんね」と優しく微笑んで答えられました。
 あざみを見るたび、いいえ、旅館を続ける限り、思い出す大切な大切なお客様です。
 
 

心に残るお客様①

 お蔭様で、華もみじもたくさんのお客様にお越しいただいております。
場所が人里離れた一軒宿でございますので、お二人連れのお客様が大半を占めております。また、静かな場所でもありますので、ご年配のお客様に大変かわいがっていただいております。
 しかし、お若いお客様もおられます。今日は、長崎のY様ご夫妻(30代)のエピソードをご紹介します。
 昨年9月に初めてご利用いただき、3月に再びお越し下さいました。天気の良い日で、午後3時過ぎにチェックインされました。ご夕食の時間になりましたので、準備のため客室に行きましたが、鍵がかかっております。何度も部屋の呼び鈴を鳴らしますが応答がありません。うちの部屋の呼び鈴は、家庭の玄関の呼び鈴と同じぐらい大きな音がします。
お風呂に行かれたのかな、と思い、マスターキーで戸を開けますと、なんとスリッパが2足並んでおります。襖の前で、かなり大きな声で「失礼しますっ。」と言っても一向に返事がございません。お部屋にいらっしゃる場合は、お許しがないと入れませんので、また、鍵をかけて調理場に戻りました。
 色々想像しました。体調が悪いとか、何か起きたのではないかと。
20分経っても物音一つしません。更に10分後、部屋の呼び鈴を鳴らしますと「は~い」と奥様がいつもと変わらず笑顔で出てこられました。「すいません、二人ともぐっすり、眠ってました」。私は、すっごく大きな声で何度も叫んだのに。
 Y様ご夫妻は、明るく気遣いが素晴らしい奥様と、その奥様が大好きで常に笑顔で見守られるご主人様です。お二人とも気さくで「本当に、自分の家のように眠っていました」とおっしゃて下さいました。心配もしましたが、私はその言葉が嬉しくてたまりません。旅館に来て、そこまで安心して、リラックスしていただけた事が嬉しいのです。夕食の間も、ご主人様がカブトムシを採るのが上手なこと等楽しい時間を過ごさせていただきました。
 Y様、このエピソードを載せることを快諾いただいて、ありがとうございました。華もみじは、日本一のくつろぎ旅館を目指します。またのお越しをお待ちしております。
 

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